タイトル 料理のコツ
著者 秋山 徳蔵
出版社 中公文庫
初版 2015年9月25日
2015年4月~7月放映 TBS ドラマ『天皇の料理番』のモデル、秋山徳蔵の書。
表紙のデザインがいい!
そして贈序を寄せているのが吉川英治ときている。この本、タダモノではない。
もともと有紀書房より 1959年に発行されたものの復刻版らしい。
秋山徳蔵 70歳の時の著書となる。
あとがきに
まだまだ書きたいことは山ほどあるのだが(中略)、皇太子さまのご婚儀も間近に迫り、身辺多忙を極めるようになったので、このへんでペンを置く。
とあるので、七十を超えてなお天皇家のために仕えていたことがわかる。
実際、現役引退は84歳。その2年後、86歳を目前に他界している。
これ、レシピ本ではない。
その前段階、おいしい料理を作るための基礎知識を「料理のコツ」として”家庭の奥さんや娘さんたち”に惜しみなく教えてくれる虎の巻だ。
徳蔵さん直伝 料理のコツ五則
1. 材料の選択: いい材料を選択すれば、その料理はすでに半ば成功
2. 自然に従う: 材料を最もよく生かす手の加えかたをする
3. 間を大切にする: 手順をよくする。料理に追っかけられてはいけない
4. 道具をととのえる: 必要な道具を揃え、手入れをし、いつでも使えるようにととのえる
5. 三加減: 火加減、味加減、盛り加減
この五則のうち、特に材料の選択にほとんどのページを割いている。
とはいえ堅苦しい料理論は見当たらない。
日本のみならず、渡仏後フランス女性にまじりマルシェで食材を吟味する観察眼鋭い徳蔵さんが登場し、クスッと笑える場面もあり、とにかく読んでいて心地がいい。
そんな人間味あふれる徳蔵さんが考える究極の「料理のこコツ」は、次の一文に集約される。
材料の選択から始まって、最後の盛りつけにいたるまで細心の「注意」を払い、瞬時も怠慢することなく、一挙手一投足もおろそかにすることのない心構え
この心構えを保ちつつ、84歳まで料理に命を懸けた徳蔵さん、スゴイよ…。
読後、自分はどんなおばあちゃんになるのかが、少しだけ楽しみにもなる、清々しい一冊だ。